手作り石鹸で学ぶ環境と健康に本当に優しい化学講座(1)

2015年前期 なごや環境大学 共育講座 木陽塾(平成27年5月)

ここで学ぶことは、石鹸についてだけでなく広く健康に役立つ油脂や環境のための化学の基礎知識についてです。
1)科学と環境
地球は、たった一つで、植物や動物、そして人間が生活しています。人間の生活には農耕で食物を得活動も欠かせません。その農耕も世界単位で行われて、昔のような地産池消ではなく、海外から多くの食物が輸入されています。また、それらを消費した時にはゴミがでます。そうした人間の生活には、油脂とそれを洗う石鹸が必需品なのです。
1-1)食料自給率
世界の主な国の食料自給率は100%を超えている食料輸出国がある一方で、日本は自給率39%程度の非常に低い水準に落ちています。身の回りから畑や田園風景が消えて行っているのは、現実の自給率の数字としても表れています。 自給率の低下は、海外からの食物の輸入がふえていることを意味しています。
1-2)フードマイレージ
ここで、フードマイレージという概念を説明します。フードマイレージとは、食物の消費した量(重さ)×移動距離(Km)という数字です。どれだけ遠くから運んできた食物を食べているか、地産池消からどれだけかけ離れているかの指標です。下図を見ると日本は、非常に世界的にもフードマイレージが大きいことが分かります。狭い国土に多くの人口が住んでいるためもあるでしょう。国土の狭い韓国もフードマイレージは大きいですが、日本ほどではありません。農業国であるフランスは小さな値になっています。国土は小さいイギリス、工業国であるドイツも日本よりずっとフードマイレージは小さいです。

2)石鹸の化学
日本の食料事情の概要が分かったところで、次はいよいよ石鹸の材料の油脂についてです。石鹸の材料は、油脂と苛性ソーダと水です。油脂は天然油脂の他に、石油由来の脂肪酸なども材料として使えます。苛性ソーダは、「酸・アルカリ」の分類のうち、アルカリの強い薬品です。暮らしの中のアルカリでは、重曹が代表です。重曹にも苛性ソーダにもナトリウムという食塩と同じミネラルが含まれています。
2-1)炭素
油脂と苛性ソーダと水を混ぜると、石鹸とグリセリンという副産物ができます。 油脂の化学式を考える時に必須なのが、炭素C(カーボン)です。油脂は燃やすと炭(煤)ができることからも分かるように、炭素などの集まりからできています。炭素は空気中の二酸化炭素を取り込んだ植物の身体の大部分を占めています。ここでは、炭素は植物や動物の身体の材料と覚えておきましょう。
2-2)苛性ソーダ
さて、石鹸のもう一つの材料は苛性ソーダでした。苛性とは肌が荒れるという意味の言葉で、ソーダというのが、ナトリウムのことです。ナトリウムは食塩の成分のミネラルです。海水や身体に含まれる必須ミネラルです。水に溶けやすい性質を持っています。塩酸と苛性ソーダを混ぜる反応が酸アルカリの反応です。食塩と水が出来ます。ちょっと不思議ですね。
2-3)油脂
油脂とは、日常使っているオイル全般を指し、液状の油と室温で固まっている脂を含めて油脂といいます。材料は、大豆油、パーム油、菜種油などが産出量が多いです。特に、オリーブオイルやローレル油などはヨーロッパで古くから使われていて石鹸の材料としても有名です。石油や石炭も元は植物や動物の死骸が土の中で炭状になったものと言われています。石油石炭を精製して作るオイルも菜種油の油も同じ化学の構造をしています。それでも、菜種は、日光を浴びて1年のうちに再生できる油で比べ、石油石炭は過去の数億年
という長い年月の日光を浴びた動植物の油を一瞬のうちに使ってしまうという違いもあります。油はどんなものでも未精製の不純物が混ざります。不純物や微量成分といいます。石油・石炭由来の油には、そうした不純物に不安が残ります。一方、オリーブ油のような再生可能な植物油の微量成分には、いい香りや、肌へのいい効果などが期待できるものもあるといわれており、重用されています。

2-4)プランテーション
パーム油などは植物油の中でも1年に12回も収穫できて生産量も多い再生可能エネルギーの代表のような油です。しかし、それはマレーシアやインドネシアといった東南アジアの熱帯雨林を切り開いてプランテーションという単一品種だけを栽培する巨大な農園を生み出しました。そのプランテーションによって地球温暖化は加速されてしまいました。地元の農民の生活も必ずしも裕福になったわけではありません。欧米先進国の都合を東南アジアなどに押しつけている側面もあるのです。
3)健康と環境
3-1)油脂と健康
さて、この油を健康との関連でとらえると、三大栄養素、Pタンパク質、F脂肪、C糖質のバランスです。アメリカやフランスなどの食生活では脂肪を取りすぎですし、ベトナムやタイでは、糖質の取りすぎのように思えます。日本の食生活こそが、タンパク質、脂肪、糖質のバランスが優れているといえると思います。
3-2)石鹸と環境
石鹸に話に戻って環境との関連を考えます。石鹸は油汚れを落とすので、生活に欠かせない化学薬品です。その石鹸を含んだ水は、河川に流れ込んだ後、微生物による生分解を経て元の水に戻ります。微生物が石鹸を食べて、分解してくれるのです。石鹸の中でも合成
石鹸LASというものが以前が多かったです。合成石鹸で、分子の形が枝分かれせずに直線的な石鹸でした。それは、グラフでは、生分解されるのに時間がかかっていることがわかります。これも枝分かれした合成石鹸にすることで改善されました。
また、天然成分の石鹸はずいぶん生分解されやすくて環境によさそうに見えます。これも数字のマジックで、同じ量が溶けていたときには石鹸が分解されやすいのは確かですが、石鹸は泡立ちにくく、たくさん使ってしまいます。つまりたくさん水に溶かして使われることが多いです。
3-3)石鹸と環境
石鹸の分子は一般的には図のように水に溶けやすい部分と油に溶けやすい部分がくっついた分子構造をしています。水に溶けやすい部分にはナトリウムがあります。油と仲良しの部分は元々油に由来する構造で、炭素が12から20個程度連なった構造をしています。炭素が長いと油と仲良くて、短いと水に溶けやすい性質になります。石鹸の洗浄力は、これらのバランスの上に成り立っています。
石鹸や洗剤は、使用量をできるだけ少なくすることがもっとも大切なことです。
3-4)石鹸と水
石鹸の使用量を少なくするためには、考えるべき点が水の側にあります。石鹸を使って泡立ちやすい水か、泡立ちにくい水というのがあります。それらは水のなかの微量ミネラルつまり、水のなかのマグネシウムやカルシウムの量が、国や地域によって異なるのです。それを水の硬度というのです。
図は、ミネラルウォーターを軟水から硬水の順に並べたものです。日本の水は軟水です。ヨーロッパ、特にアルプスの水は硬水です。
3-5)硬水
石鹸はナトリウムが水に溶けやすいので、泡だって洗浄力を持ちます。しかし、水のなかにマグネシウムや
カルシウムが多いと、それらと石鹸が結合して、泡立たない石鹸カス、金属石鹸ができてしまいます。これらは石鹸の使用感を落とします。また泡立ちが落ちるので、使用量が増えてしまいます。それを防ぐのが、キレート剤という薬品です。EDTA(エデト酸)と呼ばれるキレート剤がその代表です。キレートとはカニにハサミを意味して、マグネシウムやカルシウムを図のようにキレート剤の内部に捕まえる働きをします。そのおかげで石鹸が泡立ちが大幅に改善されます。ごくごく微量の使用にとどめるのがいいと思います。
3-6)ヨーロッパの硬水
ヨーロッパの硬水では日本と同じ石鹸では泡立ちが悪くて使えないことが多いです。日本ではナトリウムを含む固体石鹸が一般的ですが、ヨーロッパではナトリウムの代わりにカリウムを含む液体石鹸が一般的のようです。カリウム液体石鹸は、日本でもメロン状の丸い容器などに入って公共トイレの洗い場などに使われています。あの液状石鹸なら、硬水でも汚れを落とせるのです。
4)まとめ
これまでの石鹸と環境の話をまとめると、石鹸は合成でも天然でも河川環境によくない。少ない石鹸量で洗うことが大事。そして生産過程の環境も考慮することが大事だと私は思います。
4-1)環境にいい油脂
石鹸に使うのにいい油の条件を考えると、大量に安く手に入る、肌に優しい、生分解しやすい、といった条件があることがわかります。環境と健康にいい油脂とはなんなのか?現在の世界の動植物油脂の生産量は8000万トン弱だそうです。大豆、パームがそのうち50%を占めています。それらは、主に食料に使われています。工業用にも使われています。
石鹸と化学(なごや環境大学)
1)石鹸とは?
石鹸の5000年以上前のレシピがあるそうです。羊の肉を焼いたときに脂と木の灰と水から偶然出来た石鹸を、レシピとして完成させて作るようになった伝説があります。
1-1)歴史
ヨーロッパ、特にオリーブオイルの産出するフランスや地中海側で、石鹸を作る文化が18世紀まで続いていました。主に、衣服などの洗濯に使われてきました。

年代 石鹸の特徴
紀元前2800年 バビロニア(シリア)で発祥 灰と脂の混合物
9-10世紀 スペイン、イタリアへ伝来 木炭、獣脂の軟石鹸
12世紀 マルセイユ石鹸 海藻灰とオリーブオイル
18世紀 アルカリ剤の工業化 炭酸ソーダと油脂
近代 苛性ソーダの電解法 油脂と苛性ソーダの鹼化法
現代 苛性ソーダのイオン交換膜法 脂肪酸と苛性ソーダの中和法

1-2)日本での歴史
日本では、戦国時代以前から「湯あみ」の文化があって、お湯で体を洗っていました。その時は、石鹸は使われていませんでした。ヨーロッパから伝わって、大名に献上されてはいましたが、一般庶民は軽石で体を洗っていました。
1-3)合成石鹸
第一次世界大戦中に兵隊が使う石鹸が大量に必要になるが、天然材料では、足りずに、ドイツの石炭化学産業の発展とともに合成洗剤が発明されました。
1-4)直鎖アルキル
生分解のされにくい分枝アルキル油脂を含む合成洗剤が問題となり、生分解されやすい直鎖アルキル油脂に改良されました。
1-5)無リン
リンを含む洗剤は、富栄養化が進みヘドロや赤潮を引き起こしました。リンが、植物の栄養になりますが、過剰に川に流れ込むと、プランクトンが異常に繁殖して魚が住めなくなる現象が起こりました。そこでリンを含まない無リン洗剤が開発されました。(トップ1979年発売)
1-6)酵素洗剤
洗剤の改良のなかで、服の汚れがタンパク質であることに注目して、タンパク質汚れを分解する酵素を配合した石鹸が発売されました。現在も、洗剤の主流になっています。その後、合成洗剤のコンパクト化が進み、少ない量で同じ量の洗濯ができるようになりました。

2)環境と化学薬品

家庭用排水が工業系、農業系廃水を上回っています。リンは無リン洗剤などの対策が進んでいます。工業的には、無害化してから排水や、有害成分を回収して外部へ排出しないリサイクル化が進んでいます。農業では、窒素・カリウム・リン肥料の使用や農薬の使用によって排水が水質汚染の原因になっています。
私たちが当事者である生活排水に関しては、台所からのものが一番多く、次にし尿、風呂、洗濯が続きます。その中で、食品自体を廃棄・洗浄することによる汚れが目立ちます。食べ残ししない、安易に水に流さない、食器を洗う際には汚れをふき取ってから洗い始めるという工夫ができます。
洗剤類の汚れは12%程と見積もられています。これは、洗剤を使いすぎないことが大事です。水に対して使う適量を守ることです。洗剤の中では、成分に気を付けることで、環境に対する負荷を下げることも出来ます。油脂から作る石鹸は脂肪酸(カルボン酸の一種)を材料にしています。それに対して合成洗剤では、スルホン酸を材料にしているものが多くあります。スルホン酸は、中性洗剤で肌には優しいのですが、環境には負荷が高いと言われています。

2-1)スルホン酸
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の主な用途は、約 8 割が家庭の洗濯用洗剤、2 割弱が業務用洗浄としてクリーニング、厨房や車両洗浄などであって、家庭の台所用洗剤にはほとんど使われなくなっています。

スルホン酸は、硫酸を利用して合成する酸の一種です。硫酸という強い酸と苛性ソードという強いアルカリが反応しているので、アルカリにならずに、中性になります。硬水中でも石鹸カスを作りません。
カルボン酸は、通常の油脂に由来しています。脂肪酸は、カルボン酸の一種で強アルカリと反応するとアルカリ性の石鹸ができます。
3)手作り石鹸
3-1)石鹸の材料

石鹸の材料は、オイルと苛性ソーダと水です。苛性ソーダは強アルカリの代表です。
苛性ソーダは肌や粘膜に対する刺激が激しい薬品で、目に入ると失明するので注意します。もし目に入ったら大量の水で洗い流して、すぐに眼科医にかかります。

3-2)鹼化とは

油脂と苛性ソーダが反応して石鹸をつくる反応を鹼化といいます。石鹸と副産物としてグリセリンも生成されます。

石鹸のできる量は時間と共に大きくなります。ただし、ある一定の時間まではゆっくりと進み、急に鹼化が進んで固まります。通常は、1時間程度で粘度が上がって、24時間程度で固まっていきます。そして最後はゆっくりと反応が終了していきます。また、空気中の炭酸ガスによる苛性ソーダの中和などが必要なため、手作り石鹸では通常1,2か月の熟成が必要です。
4)アルカリ

4-1)酸とアルカリ
水の性質のうち、酸っぱい味のするものを酸と言います。リンゴやレモンのクエン酸などが代表です。有機酸以外には、胃液や塩酸、硫酸などがあります。それらは、水の水素濃度が高いものを舌が酸っぱいと認識しているのだと分かりました。そのため、酸とは水の水素濃度を高くするものとされています。

アルカリは、灰などヌルヌルしたもので、酸の働きを打ち消すものです。酸素の濃度を下げる働きをするものです。
酸・アルカリを水素濃度で測った値をpHといいます。pH=7が中性の水です。水素が非常に少ない状態(―14乗の濃度)をpH14と言います。pHが1違うと10倍の水素濃度の違いがあります。

4-2)水の極性
油と水が混ざり合わないのは、水には極性があるからです。極性とは、水の分子が電気的に偏りを持っていることと関係があります。油脂は電気的な偏りがないために水に混ざりません。一方、電気的な偏りの大きな分子は水に溶けやすいです。主に金属の陽イオンとそれと結合する陰イオンが水に溶けます。

4-2)水酸化ナトリウム
水酸化ナトリウムは、アルカリの代表です。
苛性ソーダは水に非常に多く溶けます。似たようなナトリウム塩の食塩、重曹などと比較しても、3倍以上溶けることが分かります。これが、水酸化ナトリウムの極性の強さです。
重曹はアルカリ性ですが、極性が弱く水に溶けにくいため、石鹸作りに使えません。食塩は、極性は大きく水に溶けますが、中性のため石鹸は出来ません。
苛性ソーダ、重曹、食塩は互いに合成する材料となることができます。工業的には、苛性ソーダは食塩水を電気分解することで作っています。

4-3)pHと色
植物色素の多くは、酸アルカリの変化によって色が変わります。植物色素の代表であるアントシアニンは、赤キャベツやハイビスカスに含まれます。アントシアニンは酸性では赤、アルカリ性では青と色が変わる性質があり、それを利用してpHを測る指示薬に使われます。
食紅として知られる「紅麹」もアルカリによって少し、変色します。赤い石鹸は不自然な色だと言えます。一般的にアントシアニン系の鮮やかな色はアルカリ側では変色します。そういった色の特性は色素のpHに対する反応の結果だと言えます。

4-4)色
色は光の波長です。光の波の長さです。虹の並び方が、光の波長の長さの順に並んでいます。
吸収した光の補色が目で見えています。
色素は化学の反応によって吸収する光が変わります。それによって見える色も変わります。

5-1)鹼化価

鹼化に必要なアルカリである苛性ソーダの量は、鹼化価としてレシピなどに整理されています。
鹼化価は、実験的に求められますが、計算上は、平均分子量(つまり炭素の長さ)から決まります。
油脂の単位重量あたりの100%反応が進む鹼化に必要なアルカリの量です。油脂は様々な脂肪酸の混合物であることから、混合割合に応じて、油脂ごとに鹼化価は異なっています。アルカリとしてカリウムを使うときの値とそれをナトリウムに換算した値があります。オリーブオイルのカリウム鹼化価が191で、この40/56がナトリウム鹼化価で136です。1グラム当たりの値に直して0.136と表記することもあります。

5-2)ヨウ素価

油脂に反応するヨウ素の量で油脂の性質を整理した値。

油脂のなかでは、同じ炭素数でも、炭素骨格中の二重結合のあるなしで、分類できます。
炭素=炭素二重結合(不飽和結合)は反応性が高く、酸化され変質しやすい性質があります。
その油脂に含まれるC=C結合が多いものが、ヨウ素度が高いことと一致しています。

二重結合のないものを飽和といいます。
1つ二重結合のあるものを不飽和といい、
2つ以上二重結語のあるものを多価不飽和といいます。
ヨウ素価は、分子構造と形状(サラサラ/固体)をつなぐ指標でもあります。

これを石鹸にするときの反応速度は、速い:中間:遅い
つまり、不飽和の動物性の固体の脂を多く含む油は、ヨウ素価度が低く、鹼化反応が早いという原則があります。

6)健康と油脂
6-1)トランス脂肪酸

二重結合を含む不飽和脂肪酸の中に、2種類違う形の分子があります。それにシス・トランスという名前を付けています。シスは二重結合で折れ曲がった分子の形で、二重結合の同じ側に炭素骨格がついています。これが、天然の植物の油に含まれている分子の形です。この折れ曲がりのために分子が集まりにくく、固体にならず、液状の油になります。

マーガリン・ショートニングは、液状の植物油を硬化させるために水素を添加します。そのとき二重結合にトランス型のものができてしまいます。

トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸ですが、天然の植物の二重結合と異なります。脳梗塞のリスクが疑われており、摂取は控えめにします。
健康にいいとされる多価不飽和脂肪酸もバランスよく摂るようにします。

木陽塾 平成27年9月
・1)鹼化とは

油脂と苛性ソーダが反応して石鹸をつくる反応を鹼化といいます。石鹸と副産物としてグリセリンも生成されます。石鹸のできる量は時間と共に大きくなります。ただし、ある一定の時間まではゆっくりと進み、急に鹼化が進んで固まります。通常は、1時間程度で粘度が上がって、24時間程度で固まっていきます。そ
して最後はゆっくりと反応が終了していきます。

・2)極性とは
油と水が混ざり合わないのは、水には極性があるからです。極性とは、水の分子が電気的に偏りを持っていることと関係があります。油脂は電気的な偏りがないために水に混ざりません。一方、電気的な偏りの大きな分子は水に溶けやすいです。主に金属の陽イオンとそれと結合する陰イオンが水に溶けます。

・3)水酸化ナトリウムとは
水酸化ナトリウムは、アルカリの代表です。
苛性ソーダは水に非常に多く溶けます。似たようなナトリウム塩の食塩、重曹などと比較しても、3倍以上溶けることが分かります。これが、水酸化ナトリウムの極性の強さです。
重曹はアルカリ性ですが、極性が弱く水に溶けにくいため、石鹸作りに使えません。食塩は、極性は大きく水に溶けますが、中性のため石鹸は出来ません。

有機化学
炭素とは、
炭素 油脂の化学式を考える時に必須なのが、炭素C(カーボン)です。油脂は燃やすと炭(煤)ができることからも分かるように、炭素などの集まりからできています。炭素は空気中の二酸化炭素を取り込んだ植物の身体の大部分を占めています。ここでは、炭素は植物や動物の身体の材料と覚えておきましょう。
炭素の結合
炭素は、水素などの他の原子4つと結合できる結合の腕を持っています。炭素同士で長くつながるときは、4本の腕のうち、1つを右の炭素、もう1つを左の炭素、残り2つは水素と繋がっています。炭素同士の普通の結合は、グニャグニャと曲げることや、回転ができる結合です。
炭素の二重結合
炭素の普通の結合が腕を炭素同士で1つずつ出し合って結合するのに対して、二重結合は腕を2つずつ出し合って結合しています。そのため、結合は固く折れ曲がって固定されています。二重結合のあるオイルは折れ曲がった分子構造をしています。
その他の原子
水素はH、酸素はO,と書きます。CとOの二重結合もあります。その場合も炭素は結合の腕を2本使います。C=Oと書きます。
脂肪酸
炭素が連なって端がCOOHという部分があるものを脂肪酸といいます。脂肪酸は炭素の長さや二重結合の有無によって名前が付けられています。

炭素 の数 炭素の 二重結合 の数 名称略記 主に含まれている食品の例
C2 0 酸 酢 酢
C4 0 酪酸 バター、チーズなど
C16 0 パルミチン酸 肉、パーム油など
C18 0 ステアリン酸 肉、ココアバターなど
C18 1 オレイン酸 オリーブオイル
C18 2 リノール酸 大豆油、コーン油、ベニ花油など
C18 3 α -リノレン酸、ω-3脂肪酸。単に「リノレン酸」といった場合、普通こちらを指す。 シソ油、エゴマ油、キャノーラ油、大豆油など
C18 3 γ -リノレン酸(ガンマ・りのれんさん)、ω-6脂肪酸。 月見草油など特殊な植物油
C20 4 アラキドン酸 肉、卵、魚、肝油など
C20 5 イコサペンタエン酸 (又はエイコサペンタエン酸)[EPA] 青魚、魚油など
C22 6 ドコサヘキサエン酸[DHA] 青魚、魚油など
油脂の種類
油脂の分子構造
グリセリンの部分に脂肪酸が3つ結合した分子構造をしています。

原子量:原子の性質で、原子ひとつあたりの重さを6*10の23乗したもの。
分子量:分子のすべての原子の原子量の和。
オイルの場合は、炭素の長さにほぼ比例して大きくなる。オレイン酸は分子量282。水は18。ナトリウムは23。苛性ソーダは40。

水の分子
酸素原子1つと水素2つがくの字型に結合している。分子同士も緩く弱い力で結びついている。極性がある。つまり電気的な偏りがあるので、極性があるものを溶かしやすい。つまり油を溶かしづらい。

オイルの分子
オレイン酸などの脂肪酸が3つグリセリンに結合した分子。二重結合がないとほぼ直線的な形をしているが、二重結合があると、そこで折れ曲がった形になる。

1モルという考え方
水18グラムで1モルという単位。オレイン酸282グラムで1モルという単位で、分子の数で等しい。

けん化価
油脂1gをけん化するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をけん化価という。
油脂1molをけん化するのに水酸化カリウムが3mol必要であるので、油脂の分子量をMとすると、M(g)の油脂をけん化するのに水酸化カリウム(KOH=56)が3×56(g)必要ということになる。したがって、1(g)の油脂をけん化する水酸化カリウムの質量は
けん化価をSとすると、次の比例式で求められる

M(g) : 3×56×1000(ミリグラム) = 1(g) : S(ミリグラム)
上記の式から、油脂の分子量(M)が分かっていればけん化価(S)を求める事ができるし、逆にけん化価(S)が分かっていれば、油脂の分子量(M)を求めることもできる。
けん化価が大きい油脂ほど分子量は小さくなる。けん化価(KOHでの値)で250から180程度の油脂が多い。
けん化価S´(グラム)をNaOH(苛性ソーダ)の値で求めるには、上記の式をNaOH=40を用いて、

M(g) : 3×40(グラム) = 1(g) : S´(グラム)
計算例)
オリーブオイル(分子量M)として、けん化価0.136を代入すると
M:120=1:0.136
M=120÷0.136
=882.3

オリーブオイルはオレイン酸が80%近くを占めている。
オレイン酸はC18で不飽和結合が一つ。
COOHCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CHCHCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH3
Cは12×18で216、Hは2*16+2+3で35、Oは16*2で32、
グリセリン分でCが12*3で36、H*5で5になる
以上で、脂肪酸が3つグリセリンに結合していることに注意すると、
(216+36+32)*3+36+5=852+41で893
C16のパルチミン酸は分子量が12-2少ないので3倍して30少なくなる。
これが10%含まれるため、893から若干小さな平均分子量になる。
油脂の酸化・・・乾性油、半乾性油、不乾性油
ヨウ素価の大きいものほど固化しやすい。
INS値⇒油脂のヨウ素価とけん化価から決まる値(Iodin’n Saponification Value)

INS値が米国で広まったのは、Dr. Robert S. McDanielの本「Essentially Soap」によります。オイルの配合を決める場合に、INSを160に近づけるようにすると、硬さやその他の物性値が理想に近づくということも考慮してみてはどうか、と書かれています。
INS値=鹸化価 - ヨウ素価

複数のオイルのブレンドの際に使わるとされます。
2、鹼化の速度

初期:材料である苛性ソーダと油脂が多く、反応速度も速いが、混ざり合わないために石鹸が出来ていかない。
中期:材料である苛性ソーダと油脂が混ざり合って石鹸が急激に出来ていく。それに伴い材料濃度が下がっていくため反応速度が落ちていく。
後期:材料である苛性ソーダ、油脂の濃度が下がって反応速度が下がる。石鹸が徐々にできていく。

中期
オイル分子と苛性ソーダ分子が結合する反応なので、二つの濃度によって反応速度は決まります。反応速度は二つの濃度の掛け算で決まり、計算からも反応速度は時間に対して、次第に遅くなる(中期安定期から、後期へ移っていく事が示されます。この反応は、等間隔の時間でプロットすると1/X(石鹸の濃度の逆数)が直線的に減少します。

時間が経ち反応が進むにつれて石鹸の濃度が大きくなって、反応速度は遅くなっていきます。 鹼化を速くするには、
1)濃度を濃くすること
2)温度を高くする
3)よくかき混ぜる
4)触媒を入れる
が挙げられます。
温度を上げると分子の動きが大きくなり、ミクロ的にかき混ぜるのと同じ効果があります。
かき混ぜれば、苛性ソーダと油脂の分子が何回も出会う回数が増えて
反応速度があがります。コールドプロセスとホットプロセスはトレース以降の温度をあげることで反応速度をあげることに違いがあります。

トピック)鹸化しない油脂を残す石けん(ディスカント)
Q.油脂の10%が鹸化せず残るようにアルカリを配合した場合、未鹸化の油脂として残るのは、鹸化速度の遅い油脂が多くなるのか?鹸化反応が遅いオリーブが未鹸化として残るのか?
A. 油同士は混ざりやすいので、反応速度による選択性はほとんどないと思います。
3、モル数
標準の手作り石鹸の時の分子の数

水180ccなら180グラムで10モル。つまり6*10^24個の分子。
苛性ソーダ70グラムでほぼ1.5モル。9*10^23個の分子。
オイル500グラムでおよそ0.5モル。3*10^23個の分子。
水10個に対して苛性ソーダ3個、オイル1個の割合。

水の中の油の球
水の方が分子は遙かに小さいが、数は10倍多い。おそらく、オイルは分子が集まってオイルの球状の玉になって水の中に浮いている。炭素数が大きいと疎水性が高くより大きな玉になっている。
水の中の苛性ソーダ
水に苛性ソーダは混ざりやすい。ほぼ均一に分布していると思う。

100%反応するとオイル全量0.5モルに対して苛性ソーダ1.5モルが反応する。
石鹸は1.5モルできる。
トレースは10%程度反応が進んだ時、つまり0.15モル石鹸が出来た時から粘度が上がって起こる。
4、反応速度
トレース反応速度
特徴1、10から20%程度反応が進むまでの時間がトレースのではじめる時間。
特徴2、トレースのでる時間は温度が高いと早まる。
特徴3、トレースのでる時間が早いオイルがある。

中期の反応速度
特徴1、20から90%まで間では反応が安定している。
特徴2、反応速度は一定。
特徴3、反応速度は温度が高いと速くなる。
特徴4、オイルによって反応速度が異なる。
特徴5、トレースが早いオイルは、安定反応速度も速い。

最初は、オイルが集まっていて、水と混ざり合わずにいる。オイルの球の水との界面でだけ反応が進む。それは界面でオイルが消費されてオイルの球の真ん中からオイルが拡散してくる。いっぽう界面でナトリウムが消費されて水ならナトリウムが動いて(拡散して)界面に近づいてくる。
この拡散が反応速度を決めている。
界面で出会ってから両者が結合して石鹸ができる反応速度もあるが、それはおそらく早い。ただし熱の影響を受ける。また、オイルの種類によって異なる。

トレースが出るまで(初期)
オイルと水が混ざり合っていない。その状態で石鹸が出来始めて、やがてオイル球が小さくなり、界面面積が増えていく。それに従って石鹸ができていく。反応速度は遅い。

トレース出てから(中期)
十分に分子レベルで混ざり合ってから、反応が進む状態。石鹸が10%(この場合0.015モルの石鹸が)できているとき辺りからトレースが始まる。それ以降、石鹸の粒子が互いにつながり始めて流動性が低くなっていく。粘度があがる。やがて90%程度石鹸ができるとほぼ固体になって硬くなる。
トレース後に急激に反応速度が早くなり、一定の速度で90%程度まで進む。
水10モルは変わらず、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)とオイルが消費されて石鹸になり、反応が進むにつれて反応速度は落ちていく。

反応初期(オイル球が大きい) 反応中期(オイル球が小さい)

乾燥過程(後期)
石鹸が90%以上できていると1.3モル程度の石鹸、0.2モル程度の苛性ソーダ、0.07モル程度のオイル、10モルの水の状態になる。ここから水が蒸発して乾燥していく。

オイルによって反応エネルギーが異なる。どんな反応エネルギーでも温度が上がると反応速度係数が大きくなり、反応速度Vが大きくなる。反応エネルギーは、大きいほど、
参考)V=exp(-Ea/RT)×(a-X)(b-X)
反応速度は濃度と温度と反応エネルギーによって決まる。

反応速度
炭素数
炭素数が多いと疎水性が高く、オイル球が大きいまま混ざりにくい。

二重結合
二重結合があると、同じオイル球が体積が大きくなる。同じ重さでの表面積が小さくなる。また界面にも並びにくくなる。

撹拌によってなにが起きているか
水の中の油のオイルが細かくなる。または、球が崩れてはまた再結合して混ざり合う。しだいに球が小さくなる。また水中のナトリウムが動きやすくなり、拡散が進み、オイル界面に早く近づき、反応が速まる。

油の中の分子
水中のオイルはおよそ一滴5mgとすると、分子数は十分多い。やがて1ミクロン程度の球になると一滴1マイクログラムで含まれる分子は1000分の1になる。一方、総表面積は1000倍になる。

※参考
豆腐10センチ角で1000cm3のものが1個だと表面積は600平方センチ。
豆腐1センチ角で1cm3のものが1000個だと表面積は6平方センチ×1000個で6000センチ平方で、10倍の総表面積になる。つまり、一滴のオイルの重さが1000分の1になるとき、総表面積は1000倍になる。

、けん化理論におけるもっとも重要なポイントは以上の「けん化速度」ですが、以外にけん化速度に影響をあたえる要素は、攪拌、温度、アルカリ量、アルカリ濃度、遊離脂肪酸(油脂酸度)と、けん化促進のための添加物(アルコール、塩)があります。

温度は10℃上げるとけん化速度は1.5倍になるといわれています。たとえばヤシ油の場合では、25℃を45℃へ上げると3倍速くなります。溶解度が大きな油脂(液脂=植物油)は、45℃くらいが臨界温度で、それ以上はかえって後退します。
動物脂など飽和脂肪酸(ステアリン酸・パルミチン酸・ミリスチン酸・ラウリン酸)の多い場合は、加温(60-70℃)から加熱(沸点100℃)までが可能で、たとえば45℃から70℃へ上げると、10倍ほど速くなります。http://www.sekkengaku.com/dia/kenkariron.html

5、石鹸の性質
水で柔らかく崩れる性質
疎水性が高い方が水でも硬いまま。
ヨウ素価の高い方が溶け崩れやすい。

石鹸の硬さは、なにで決まるか?
1) 石鹸の分子の種類(分子量と二重結合)
2)石鹸の粒子の大きさ(粒子石鹸の育ち方)
3)石鹸の不純物の量(グリセリンの量、過剰油脂の量)

炭素数と二重結合の影響について
炭素数が長いほど、疎水性が強くなる。
炭素鎖同士の相互作用は炭素数が多いほど大きくなる。
炭素鎖同士の相互作用は二重結合があると弱くなる。

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